年に何度か

年に何度か書くブログ。昔は日記だった。

第2話

ずーっと前に書いたモノ(第1話)の続きです。つまらないので読み飛ばし上等。上等?
45年前、素子と若き日のおじいさんはボロアパートで同棲していた。おじいさんはミュージシャンを目指し、毎日のように路上で弾き語りをしていたが立ち止まる者はほとんどおらず、自分に音楽的才能が無い事を薄々感じ初めていた。決して美人ではないがオトコっぽくサバサバした性格の素子は芸者としてそれなりに評価されていた。だからこそ、その収入で生活できていたのである。そんな状態でも、おじいさんは素子に感謝するどころか愛情も失っていき、借金をしてはボロボロの国産車でテレクラに通うようになっていた。素子がお客であった会社社長の元に走ったのはそんな頃である。
「あの、僕は大丈夫ですから。」
殺人カツアゲ転校生はその風貌に似合わない弱々しい声で二人をなだめました。
「あ、あぁ」
おじいさんは、あまりの違和感にさっきのムカツキを忘れ、まさにキョトンという言葉がピッタリな表情で殺人カツアゲ転校生と素子を交互に見ていました。
「すまんな、青木。ともかく、そこの空いてる席に座ってくれ。」
青木は不良漫画に憧れてそんな格好はしているものの、実際にはカツアゲをした事などありませんでした。ナメられてはマズい。そんな意識で転入初日を迎えたものの、緊張のため念入りに考えていたハッタリ自己紹介も忘れ、思わず弱々しい声を出してしまった自分に後悔しきりで、なかばうなだれ気味に席に付きました。
「みんな仲良くたのむぞ。特にじい、お前は。」
「言われなくともわかっとるわい。」
「まったく、素子の言うとおりだぞ。大人気ない。」
そう言いながら腕時計を見た先生が授業の開始を告げようと口を開いたその時、始業を告げるチャイムが鳴り始めました。
「キーンコーンカーンカーン」
おじいさんが調子はずれのチャイムに思わず噴き出しそうになった瞬間です。そこはもう、今までいた学校ではありませんでした。わけもわからず回りを見回すと、あたり一面の草原に呆然と立ちすくむおばあさん、素子、青木がいるだけでした。

- 続く -